数ある学問のなかでも,心理学はその多面性を誇る代表ではないかと思います。現代の心理学は,“事実”を追究する科学(science)の一翼を担っていますが,その科学としての心理学にも,生物科学としての心理学,認知科学としての心理学,社会科学としての心理学,等々,多くの側面があります。また,現代の心理学は,社会の各方面からその専門的技術・技能を求められており,その応用的学問の側面も拡大の一歩をたどっています。さらには,現代の心理学は,一部その伝統のなかに人文学(humanities)としての側面を残しており,そこでは人間の“価値”が追求され続けています。このように心理学はまさに多面的な学問であり,それがゆえにか,心理学の各方面の研究者が一堂に会する機会はさほど多くあるわけではないようです。我が国では,この日本心理学会の年次大会の他には見当たらないのではないかと思います。その意味でも,日本の心理学研究者にとって,この大会は貴重な場であり続けることでしょう。
本第72回大会では,学会の意向を受けて,初めての試みをなしてみました。それは,隣国の韓国心理学会(Korean Psychological Association)の会員の皆様の発表をお迎えできるようにしたことです。幸い,韓国心理学会会員の皆様からは41件という多数の一般研究発表をお寄せいただきました。また,日本心理学会と韓国心理学会の合同のシンポジウムも催されることになりました。日本心理学会大会において他国の心理学会の会員による研究発表を認めるという,この初めての試みが,日韓両心理学会のさらなる発展と提携,さらには東アジアの心理学の一層の興隆につながればと願っております。
本大会では,一般研究発表1,450件,招待講演6件,シンポジウム19件,日本心理学会企 画シンポジウム2件,日本心理学会企画講演1件,日本心理学会国際賞特別賞講演1件,同 奨励賞講演6件,企画ワークショップ4件,ワークショップ125件,小講演38件と数多い学 術プログラムを3日間にわたり提供いたします。また,2日目の夜にはサッポロビール園で の懇親会,1日目と3日目の夜および2日目の午後には先駆的日本人女性心理学者の生涯を 描いた映画の上映会を設定いたしました。
本大会は北国札幌にて開催されます。涼しい九月の風がエルムやポプラの梢を揺らす北海道大学の構内で,大勢の会員の皆様が心理学の熱い議論を闘わせている姿を,今から心に思い浮かべております。
大会準備委員一同,皆様のご参集を心よりお待ち申し上げます。
2008年7月
日本心理学会第72回大会準備委員会
委員長 阿部 純一
